■研究代表者あいさつ■REMAP-CAPとは(Steve Webbより)

研究代表者あいさつ

この度、AMEDの新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業として、アダプティブデザインを用いたCOVID-19国際多施設ランダム化比較試験と重症呼吸器感染症に対する臨床研究体制の基盤構築”にPIとして取り組んでいる聖マリアンナ医科大学救急医学の藤谷茂樹と申します。

新型インフルエンザ感染、エボラ出血熱感染、新型コロナウィルス感染症など世界的なパンデミックがいつ起こるかわからない状況となっています。もともと今回のような新型コロナ感染症などパンデミックが起こる前からこの研究は開始されています。パンデミック状況下では、効率のよい研究デザインが必要であり、従来の1つの研究に対してRCTを実施するのは、時間、費用、労力がかかり、タイムリーな研究結果が報告されることが望ましいです。

今回の新型コロナ感染症のパンデミックでは、しっかりとした研究デザインがなされないまま、未承認薬の抗ウィルス薬が観察研究として行われた経緯があります。いくつかの薬剤がCompassionate useとして使われましたが、この時にREMAPで国際的に協力体制が構築されていたら、エビデンスがある治療法が早く分かったかもしれません。

国際多施設研究であるREMAP-CAPは、ユニークな研究デザインです。

REMAP (A Randomized Embeded Multifactorial Adaptive Platform trial for Community-Acquired Pneumonia)とは、通常診療への組み込み(embedding)、複数のドメインから各施設の状況に応じて選択できる(multifactorial)、柔軟性(adaptive)、複数の介入を同時に評価ができる(platform)の略語を意味しています。世界の集中治療医学の重鎮がこの国際研究のリーダーとなっています。Monash大学のSteve Webb教授、Toronto大学のJohn Marshall教授、Pittsburg大学のDerek Angus教授と名だたる方々が名前を連ねています。今後質の高い効率の良い研究成果を報告されていくことになり、日本も国際的に同調して、エビデンスの発信ができればと考えています。

今回の研究で用いるアダプティブ・デザインとは、中間解析の結果に基づき、各群への被験者の割り付け割合の変更、特定の群の中止、目標症例数の見直しなど、進行中の臨床試験のデザインに変更を加える多段階試験の総称です。そのため、既存の診療レジストリのように平時から、継続的に症例の組み入れを行い、症例集積をすることになります。そして、これは新興・再興感染症の流行時にも、既存の組織的基盤を活用しながら、迅速に知見を集積することを可能にします。

聖マリアンナ医科大学救急医学
教授 藤谷茂樹

REMAP-CAPとは(Steve Webbより)

Steve Webb氏は本研究の構想に関わったリーダーの一人です。

REMAP-CAP:重症市中肺炎およびCOVID-19を含む新興・再興感染症に対する臨床研究プラットフォーム

○背景

REMAP-CAP研究は、2009年に発生した新型(H1N1)
インフルエンザの世界的流行を受け、複数の政府による助成を受けて2011年に計画が始動しました。感染症専門医、免疫学者、集中治療医、救急医、ベイズ統計の専門家、そして臨床研究の専門家ら、世界をリードする集中治療の研究ネットワークを基盤に成り立っています。この研究ネットワークは、万を超える重症症例の研究実績があり、研究のデザイン、実施、報告において多くの経験を積み重ねています。

○目標

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する私たちのゴールは、重篤な状態にある患者さんたちの死亡率、合併症を軽減し、ICU入室期間を短縮する治療介入に関するエビデンスを蓄積することにあります。

○パンデミック(世界的流行)への対応

この数年にわたってREMAP-CAPは特定の感染症の世界的流行がない状況での重症市中肺炎の症例蓄積を行ってきました。現在までに3つの大陸の、13の国における50以上の集中治療室からの症例を解析しています。さらに50以上の集中治療室が近々加わる予定で、その数は現在も日々増えています。さらにREMAP-CAPは、突如出現する感染症の世界的流行—今がまさにそうです—にも対応できるようなデザインに元来なっていました。 COVID-19の世界的流行に対応するために必要な変更は承認を受けており、現在すでにCOVID-19症例の蓄積を開始しています。

○多くの臨床的疑問に答えられるようにデザインされています

REMAP-CAPは専属のスタッフがいなくても参加することが可能です。臨床医がリアルタイムに症例を登録することで参加できます。この研究の特徴として、ベイズ統計理論に則ったアダプティブ・デザインを用いているため、多くの臨床的な疑問に迅速に対応することが可能となっています。

・多領域にわたる研究プラットフォーム:参加症例は複数の領域の治療群に対して同時にランダム化することができます。
・リアルタイムの解析:十分なデータが集まった時点ですぐに解析をし結論を導くことができます。解析は毎週行われます。
・研究プラットフォームの中において、優位性、劣勢もしくは同等性を検出することが可能です。
・新しいエビデンスの出現に基づき、必要に応じてさらなる治療介入が追加されます。
・患者は様々な治療群に割り付けられるので、結果的に全く治療を受けない患者は存在しません。

○現行の市中肺炎治療との関連

REMAP-CAPはすでに重症市中肺炎の治療に関するオープンラベルの研究を行っていますが、COVID19に関しては下記を含む介入研究を行います。(注:国際レベルでの代表的な治療介入群。国内においては参加していない介入群も含まれます。)

・抗ウィルス薬療法
・ステロイド療法
・免疫調整療法

この研究プラットフォームではそれぞれのドメインが相互に影響することがあります。例えばステロイド療法は抗ウィルス薬が処方されている症例でのみ組み込まれます。現状では米国ではすべての入院患者、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、英国ではICU入室前の患者を組み込んでいます。

○フレキシブルなデザイン

REMAP-CAPは他の臨床研究と並行して行うことが可能です。参加病院や国・地域ごとに参加するドメイン(治療群)や介入を選択することができます。すべてのドメインに参加する必要はありません。

○患者の予後を改善するようなデザイン

この研究プラットフォームはアダプティブにランダム化を行います。中間解析が行われる度にランダム化の重み付けが再検討され、参加患者が最も適切な治療介入を受けられる可能性が高まるように修正されます。

○日本の皆様へ

「REMAP-CAPのメンバーを代表して、日本の皆様をREMAP-CAPに歓迎いたします。
これは素晴らしい共同研究であり、皆様が我々とREMAP-CAPの発展への道のりに加わることを楽しみにしています。」

On behalf of the REMAP-CAP Australia and New Zealand Regional Management Committee (ANZ RMC) I am pleased to invite our Japanese colleagues to participate in the Randomized, Embedded, Multifactorial Adaptive Platform trial for Community-Acquired Pneumonia (REMAP-CAP) trial. This is an exciting collaboration and we look forward to you joining us in the continuing REMAP-CAP journey.

Many thanks for your interest in the REMAP-CAP trial.